開札の結果が、まったく同じ金額だった

開札が終わり、発表された札の金額を見て息を呑む。最低の金額を書いた札が二つ、まったく同じ価格で並んでいる。価格を詰め、見積もりを何度も確かめ、ここまで来た。けれどその瞬間、落札は価格だけでは決まらないと知る。「落札となるべき同価の入札をした者が二人以上あるときは、契約担当官等は、直ちに、当該入札者にくじを引かせて落札者を定めなければならない」(予算決算及び会計令第八十三条第一項)。開札の場で、くじを引く。その場にいなければ、権利を失う。

同価くじ引きとは

同価くじ引きとは、競争入札で最も低い金額の札が二つ以上あり、かつその金額が同じだった場合に、その場で入札者にくじを引かせて落札者を一人に絞る手続きのことです。一円単位まで詰めた見積もりが、まったく同じ金額で重なることは、確率としては低い。けれど発注件数が多ければ、いつか必ず起こります。その日が来たとき、くじを引く準備ができていなければ、せっかく最低価格で入れた札が、その場で無効になってしまいます。

本文の図解

くじを引かなければ、落札の権利を失う

予算決算及び会計令第八十三条第二項は、「前項の場合において、当該入札者のうちくじを引かない者があるときは、これに代わつて入札事務に関係のない職員にくじを引かせることができる」と定めています。ここで大事なのは「代わって」という語です。くじを引かなかった入札者は、その時点で落札の権利を放棄したとみなされます。代理のくじは、あくまで入札者本人がくじを引かなかった場合の補完措置であって、入札者が欠席したまま自動的に代理が引いてくれるわけではありません。

開札に立ち会うことは、義務ではありません。価格を出すだけなら、電子入札システムで期限内に札を入れれば済みます。けれど同価が起きたとき、その場にいなければ、くじを引く機会そのものを失います。会社に戻って「開札の結果を教えてください」と問い合わせたときに、「同価でくじ引きがあり、あなたは欠席したため、代理のくじで外れました」と聞かされる。この瞬間、価格では勝っていたのに、準備不足で落札を逃したという事実だけが残ります。

起こる場面は予告されない

同価くじ引きは、開札の場で初めて分かります。事前に「この案件は同価になりそうです」という通知が来るわけではありません。自社が最低価格で入れたつもりでいても、他の会社がまったく同じ金額で入れていれば、開札のその場で突然くじ引きになります。だからこそ、あらゆる入札に対して、開札に立ち会える体制を整えておかなければなりません。

開札の日時は、公告の時点で決まっています。電子入札の案件であれば、開札の時刻は「自動開札」としてシステム上に示されます。立会いが任意だからといって、その時刻を軽く見ていると、同価が起きたときに対応できません。最低でも、開札の日時を社内のスケジュールに入れておき、その時刻に会社にいる人間を一人は確保しておく。これだけの段取りで、同価くじ引きの失格を防げます。

代理人を立てることもできる

入札者本人が開札に立ち会えない場合、代理人にくじを引かせることも可能です。ただし代理人を立てるには、委任状など、発注者が求める手続きを事前に済ませておく必要があります。公告や入札説明書に、代理人の扱いについて記載があれば、その指示に従ってください。記載がなければ、発注者に直接確認するのが確実です。

代理人を立てるにしても、その手続きは開札の前に終えておかなければなりません。開札の当日に「代理を立てます」と申し出ても、間に合いません。同価くじ引きは開札の直後、その場で行われるからです。

失敗は一度で済む

同価くじ引きを想定せず、開札に立ち会わなかったために落札を逃した会社は、その失敗を二度繰り返しません。一度経験すれば、開札の重みが身に染みます。けれど、その一度が決定的な機会損失になることもあります。金額を詰め、見積もりに何日もかけ、最も低い価格で入れたのに、くじを引けなかったために落札できなかった。その悔しさは、後からどれだけ反省しても取り戻せません。

同価くじ引きは、起こるかどうかを事前に知ることができません。だからこそ、すべての入札に対して、開札の日時を押さえておき、その時刻に対応できる体制を作っておくことが必要です。電子入札であっても、開札の時刻はシステムに表示されています。その時刻を、入札のスケジュールの一部として、最初から組み込んでおく。この段取りがあれば、同価が起きたときに慌てることはありません。

くじに備える、ということ

同価くじ引きに備えるとは、特別な道具を用意することではありません。開札の日時を確認し、その時刻に会社にいるか、代理人を立てるかを決め、必要な手続きを済ませておく。ただそれだけです。けれどこの「ただそれだけ」を省略したために、最低価格で入れた札が、その場で無効になることがあります。

入札は、価格を出して終わりではありません。開札があり、同価が起きればくじがあり、落札すれば契約書を出す期限があります。その一連の流れの中で、どこか一つでも欠ければ、それまでの努力が無駄になります。同価くじ引きは、その流れの中のほんの一瞬の出来事ですが、備えがなければその一瞬で勝負が決まってしまいます。

開札の日時を、入札のスケジュールに最初から入れておく。この習慣が、同価くじ引きの失格を防ぎます。価格を詰める努力と同じくらい、開札に立ち会う段取りを大切にしてください。


この記事は、公共工事の入札支援に長く携わってきた株式会社Kuwana代表の桑名敏次が、現場で繰り返し見てきた失敗をもとに書きました。