条文が最初に決めていること
会計法第二十九条の四第一項は、国が競争入札で契約の相手方を決めようとするとき、「その競争に加わろうとする者をして、その者の見積る契約金額の百分の五以上の保証金を納めさせなければならない」と定めています。この保証金が、入札保証金です。
つまり原則はこうです。入札に加わるには、自社が見積もった契約金額の五パーセント以上にあたるお金を、札を入れる前にあらかじめ差し入れておく。価格を詰めるよりももっと手前の段階に、現金を用意するという関門が一つ置かれているわけです。ここを知らずに公告を見てから慌てると、締切までにお金の段取りが間に合わない、ということが起こります。
ここで扱うのは、国の契約についての決まりです。根拠は、会計法と、その具体を定める予算決算及び会計令(予決令)という二つにあります。
なぜ「五パーセント以上」を先に預けるのか
考え方は、条文の裏側を読むと見えてきます。予決令第七十七条は、入札保証金を納めさせないことができる場合の一つとして、「落札者が契約を結ばないこととなるおそれがないと認められるとき」を挙げています。裏を返せば、入札保証金は「落札したのに契約を結ばない」という事態に備えて先に預けさせるお金だ、ということです。
発注する側から見れば、せっかく落札者を決めても、その会社が契約を結ばなければ、手続きをやり直すことになります。工程にも響きます。だからこそ、入札の時点で一定の金額を預けさせ、約束を違えたときにはそれが戻らないという形で担保を取る。入札保証金は、そういう性質のお金だと私は理解しています。

「納めさせないことができる」――免除の決まり
もっとも、五パーセント以上を必ず現金で積まなければ入札に出られない、というわけではありません。会計法第二十九条の四第一項にはただし書があり、「その必要がないと認められる場合においては、政令の定めるところにより、その全部又は一部を納めさせないことができる」と定めています。免除の道が、法律の側に用意されているのです。
その「政令の定め」が予決令第七十七条です。ここでは、入札保証金の全部又は一部を納めさせないことができる場合として、次の二つが挙げられています。一つは、入札に参加しようとする者が保険会社との間に、国を被保険者とする入札保証保険契約を結んだとき。もう一つは、所定の資格を有する者による一般競争に付する場合で、落札者が契約を結ばないこととなるおそれがないと認められるときです。
後者は、あらかじめ参加資格の審査を受けて名簿に載っている会社が参加する入札を指します。私の見てきた範囲では、この決まりを根拠に入札保証金が免除される運用は少なくありません。ただし、免除するかどうかを決めるのは発注者の側であり、常に免除されると決まっているわけではありません。免除の有無と条件は、案件ごとに公告や入札説明書で示されます。そこを自分の目で確かめるのが先で、「どうせ免除だろう」と決めてかかるのは危ういと私は考えています。
現金でなくても足りる――担保による代納
仮に納付が必要な場合でも、必ず現金で、という決まりではありません。会計法第二十九条の四第二項は、「前項の保証金の納付は、政令の定めるところにより、国債又は確実と認められる有価証券その他の担保の提供をもつて代えることができる」と定めています。
その具体の中身が予決令第七十八条で、現金に代えて提供できる担保として、国債のほか、政府の保証のある債券、一定の金融機関が発行する債券、銀行が振り出し又は支払保証をした小切手などが挙げられています。手元の現金を動かさずに、保有する国債などで代えるという選択肢がある、ということです。どの担保を使えるかも案件ごとに示されますから、ここも公告と入札説明書で確かめます。
「入札保証金」と「契約保証金」は別物
もう一つ、取り違えやすいのが、名前の似た二つのお金です。入札保証金は、入札に加わる時点で預けるお金でした。これとは別に、落札して契約を結ぶ段階で納める「契約保証金」があります。
契約保証金については、会計法第二十九条の九が、「契約担当官等は、国と契約を結ぶ者をして、契約金額の百分の十以上の契約保証金を納めさせなければならない」と定めています。入札の段階が百分の五以上、契約の段階が百分の十以上。率も、納める時点も違います。この二つを混同して資金繰りを組むと、あとで足りないという形で跳ね返ってきます。別々のお金として、別々に段取りしておくのが安全です。なお、契約保証金にも、確実な担保の提供などを要件とする免除の定めがただし書に置かれています。
札を入れる前に、お金の段取りを先に
入札保証金は、価格を考えるよりも前の、いちばん手前にある関門です。免除されるのか、現金でなければならないのか担保でよいのか、いくら用意するのか――これらはすべて、公告と入札説明書に書かれています。公告を見つけてから読み始めるのでは、締切に対して時間が足りなくなりがちです。ふだんから、自社が狙う規模の案件では入札保証金がどう扱われているかを見ておき、必要な現金や担保の目処を先に立てておくことをおすすめします。手前の関門を先に片づけておけば、本番は価格の検討に集中できます。
――この記事は、公共入札の支援に取り組む株式会社Kuwana代表の桑名敏次が書きました。見積りと札の前に、制度の土俵をどう踏むかで、中小の建設会社の勝ち負けは大きく変わると考えています。
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