落札の連絡を受けて、次に何を出すのか分からない
入札の結果が出て、自社が落札したと連絡を受けた。喜びと同時に、すぐ次の疑問が湧きます。「この後、何を、いつまでに、どこへ出せばいいのか」。落札は契約の成立ではありません。落札者として、決められた期限内に契約書と保証金を発注者へ差し入れて、初めて契約が成立します。ここを後回しにすると、せっかくの落札が無効になってしまいます。
落札から契約までの流れ
落札が決まると、発注者から落札決定の通知が届きます。この通知を受け取った時点では、まだ契約は成立していません。契約担当官等が契約の相手方とともに契約書に記名押印しなければ、当該契約は確定しないものとする、と会計法第二十九条の八第二項は定めています。つまり、落札者が契約書に記名押印し、発注者側も同じく記名押印して、初めて契約が成立するのです。
この手順を整理すると、次のようになります。まず落札決定の通知を受ける。次に発注者から交付された契約書の案に記名押印する。そして契約保証金を用意する。最後に、記名押印した契約書と契約保証金を、期限内に発注者へ提出する。発注者側が契約書に記名押印すれば、契約が成立します。

契約書の提出期限は落札決定の翌日から7日以内
契約書を作成する場合、落札者は、契約担当官等から交付された契約書の案に記名押印し、落札決定の日の翌日から起算して7日以内に、これを契約担当官等に提出しなければなりません。この7日は、行政機関の休日を含みません。つまり、土曜・日曜・祝日を除いた日数で数えます。
落札者が期間内に契約書の案を提出しないときは、落札はその効力を失います。せっかく競争を勝ち抜いても、この期限を守らなければ、その落札は無かったことになってしまうのです。ただし、契約担当官等の書面による承諾を得て、この期間を延長することができます。
契約書の作成を要しない場合は、落札者は落札決定後すみやかに請書その他これに準ずる書面を契約担当官等に提出しなければなりません。
契約保証金は契約書の案と同時に納める
契約担当官等は、国と契約を結ぶ者をして、契約金額の百分の十以上の契約保証金を納めさせなければならないと、会計法第二十九条の九第一項は定めています。落札者は、契約書の案の提出と同時に、契約金額の10%の契約保証金を納めます。
ただし、他の法令に基づき延納が認められる場合において確実な担保が提供されるとき、その者が物品の売払代金を即納する場合その他政令で定める場合においては、その全部又は一部を納めさせないことができます。工事請負契約では、保証事業会社の保証や、公共工事履行保証証券による保証も認められています。
契約保証金は、契約書の案を提出するときに一緒に納めます。契約書だけ先に出して、保証金は後から、という段取りは認められません。両方揃って初めて、発注者側は契約書への記名押印に進めるのです。
契約書に記載される事項
契約書には、契約の目的、契約金額、履行期限及び契約保証金に関する事項のほか、次に掲げる事項を記載しなければなりません(予算決算及び会計令第百条第一項)。
- 契約履行の場所
- 契約代金の支払又は受領の時期及び方法
- 監督及び検査
- 履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金、履行の追完、代金の減額及び契約の解除
- 危険負担
- 契約に関する紛争の解決方法
- その他必要な事項
これらの項目は、契約の性質又は目的により該当のない事項については記載を省略できます。発注者から交付される契約書の案には、これらの項目があらかじめ記載されています。落札者は、その内容を確認したうえで、記名押印して提出します。
技術者の配置や書類の提出
工事請負契約では、契約締結と同時に、または契約締結後に、主任技術者や監理技術者の配置を確認する書類を提出する場合があります。具体的には、技術者の資格を証明する書類の写し、雇用関係を証明する書類、健康保険等の加入状況を示す書類などです。
また、工事費内訳書や施工計画書など、契約締結後に一定期間内に提出すべき書類も、契約の内容によって定められています。これらの提出期限は、契約書や仕様書に明記されています。契約書の提出期限とは別の期限として扱われることが多いので、それぞれの期限を確認して、遅れないように段取りしておく必要があります。
期限を守る段取りを事前に組む
落札決定から契約書の提出期限までは、休日を除いて7日しかありません。落札の連絡を受けてから慌てて保証金の手配をしても、間に合わない場合があります。保証事業会社の保証を利用する場合は、あらかじめその会社と契約を結んでおく必要があります。現金で納める場合も、金額が大きいため、社内の承認や銀行での手続きに時間がかかります。
契約書への記名押印も、社内の決裁が必要です。代表者の印鑑を押すには、稟議を通さなければならない会社もあります。落札の連絡を受けてから、契約書の内容を確認し、社内の承認を得て、記名押印し、保証金を用意して、発注者へ提出する。この一連の流れを、7日以内に終えるには、事前の準備が欠かせません。
入札に参加する時点で、落札した場合の段取りを頭の中で組んでおく。保証事業会社との契約は事前に済ませておく。社内の決裁ルートを確認し、必要な書類を準備しておく。こうした備えがあれば、落札の連絡を受けたときに、落ち着いて手続きを進められます。
――この記事は、公共工事の入札に取り組む中小建設会社の支援を続けてきた、株式会社Kuwana代表の桑名敏次が書きました。



