競争参加資格「無」の通知

競争参加資格確認申請書を出し、工事の公告期限に間に合わせ、見積もりの準備も整えていた。ところが発注者から届いた通知には「競争参加資格『無』」の一文だけが記されていた。価格を出す機会すら得られず、入札そのものから排除されてしまう。この失格は、配置予定技術者が専任で配置できることを証明できなかったために起こります。

国の工事の入札では、価格を競う前に、まず参加する資格があるかどうかを確認されます。その確認の中で、配置予定の主任技術者または監理技術者が、その工事に専任で就けるかどうかが審査の対象になります。ここで必要な書類が揃っていなければ、その時点で失格です。入札の土俵に上がる前に、書類の不備で勝負が終わってしまうのです。

専任とは何か

専任とは、その工事現場にだけ張り付いて、他の工事を兼任しない状態を指します。建設業法第26条第3項は、公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについて、主任技術者又は監理技術者は工事現場ごとに専任の者でなければならないと定めています。

この「政令で定める重要な建設工事」は、建設業法施行令第27条で具体的に示されています。国又は地方公共団体が注文者である施設又は工作物に関する建設工事で、工事一件の請負代金の額が四千五百万円以上のもの(建築一式工事である場合は九千万円以上)が該当します。つまり国の工事では、請負代金が四千五百万円を越えれば、配置する技術者は専任でなければなりません。

専任が求められる理由は、工事の品質と安全を現場で直接管理する責任者が、他の工事に気を取られることなく、その工事だけに集中できる体制を確保するためです。兼任を認めてしまうと、同時に複数の現場を掛け持ちすることになり、管理が行き届かなくなる恐れがあります。

本文の図解

競争参加資格確認で求められること

国の工事の入札では、入札書を出す前に競争参加資格確認申請書を提出し、発注者がその内容を審査します。この申請書の中で、配置予定技術者が専任で配置できることを証明する書類を求められます。

具体的には、別記様式で配置予定技術者の氏名、資格、従事状況を記載し、もしその技術者が申請時点で他の工事に従事している場合は、本工事と重複する期間にどう対応するかを証明する書面を添付する必要があります。ここで求められているのは、単に「専任で配置できます」と宣言することではなく、それを裏付ける客観的な証拠です。

発注者は、提出された書類から、その技術者が本当にこの工事に専任で就けるのかを判断します。他の工事の名称、発注機関、工期、従事する役職が明記されていなければ、重複の有無を確認できません。CORINS(工事実績情報システム)に登録されていない民間工事の場合は、なおさら詳しい情報が必要になります。

実際に資格「無」とされた事例

国土交通省関東地方整備局の資料には、実際に競争参加資格「無」と判定された事例が記録されています。

ある企業が競争参加資格確認申請書を提出した際、別記様式の「申請時における他工事の従事状況等」の欄に「民間工事従事中」との記載がありました。入札説明書では「当該工事に専任で配置できること」を求め、さらに「本工事と重複する場合の対応措置の証明については、以下の書面を必ず添付すること」と明記されていました。

しかし提出された申請書には、工事名称、発注機関名、工期、従事役職の記載がなく、CORINS登録もなかったため、重複する工事の実態を確認できませんでした。また、本工事と重複する場合の対応措置を証明する書類の添付もありませんでした。

発注者は回答の中で、こう述べています。「提出された競争参加資格確認申請書では当該工事に専任で配置できるか確認が出来ないため、競争参加資格『無』としました」。

この企業は他の案件では同様の記載内容で資格「有」の通知を受けていたため、今回も同じように書いたのだと思われます。しかし、発注者が求める証明の水準は案件ごとに異なることがあり、ある案件で通った書き方が、別の案件でも必ず通るとは限りません。入札説明書で求められている書類を、一つ一つ確認しながら揃えなければ、こうした失格が起こります。

防ぐための対策

配置予定技術者の専任要件で失格しないためには、次の三つを確実に押さえておく必要があります。

第一に、入札説明書で求められている書類の一覧を、申請書を書く前に全て書き出すことです。専任の証明について、どの様式に、どのような記載を求めているのか、どのような添付書類を必要としているのかを、箇条書きにして確認します。

第二に、配置予定技術者が申請時点で他の工事に従事している場合は、その工事の名称、発注者名、工期、役職を漏れなく記載することです。民間工事であってもCORINSに登録されていない場合は、契約書の写しや工程表など、工事の実在と期間を証明できる書類を用意します。

第三に、本工事と重複する期間がある場合は、どのようにして専任を確保するのかを、具体的な対応措置として示すことです。たとえば、重複する工事が完了してから本工事に入る、重複する工事の担当を別の技術者に交代させる、といった措置を、日付と具体的な手続きとともに説明します。口頭での説明ではなく、書面として残る形で証明することが求められます。

専任の証明は、技術者の能力や資格の問題ではなく、書類の揃え方と記載の正確さの問題です。能力のある技術者を抱えていても、その配置を客観的に証明できなければ、入札には参加できません。逆に言えば、求められている書類を正しく揃えさえすれば、この段階で失格することは防げます。

期限との闘い

競争参加資格確認申請書の提出期限は、工事ごとに定められており、たいていは入札の数日前から一週間ほど前に設定されています。この期限を過ぎれば、どれほど優れた技術者を用意していても、入札に参加する権利そのものが失われます。

書類を揃える作業は、思ったよりも時間がかかります。他の工事の契約書を探し出し、工期を確認し、CORINSの登録状況を調べ、対応措置を文書にまとめる。これらを期限までに仕上げるには、公告が出た時点ですぐに動き出す必要があります。公告を見てから「この技術者で行けるか」を考え始めるのでは、間に合いません。

私が見てきた範囲では、期限に追われて書類の記載が雑になり、結果として資格「無」の通知を受けるという失敗が繰り返されています。期限が迫っているから「とりあえず出す」のではなく、期限があるからこそ、求められている記載を一つ一つ確認しながら書く。その時間を確保するために、公告を早く見つける仕組みが要ります。

公共工事の入札では、価格の競争よりも前に、書類の競争があります。その書類の一つ一つが、入札に参加する権利を守る防波堤です。配置予定技術者の専任を証明する書類は、その中でも特に重い意味を持ちます。これを疎かにすれば、どれほど良い価格を用意していても、その価格を出す機会すら得られずに終わります。

――この記事は、公共入札の支援に長く携わってきた株式会社Kuwana代表の桑名敏次が書きました。配置予定技術者の要件で入札の機会を失わないよう、申請書の段取りを整えておくことをおすすめします。