力を入れた提案が、順位を伸ばさなかった
技術提案書に何日もかけたのに、順位が一つも上がらなかった――総合評価落札方式では、こういう結果が起こります。価格を下げ、提案を厚くしたのに、落札に届かない。原因の多くは、提案の出来そのものではなく、配点の読み違えにあります。どの項目に何点が割り振られているかを取り違えると、力を注いだ先が得点に結びつかず、努力がそのまま実を結ばずに終わります。
総合評価落札方式は、価格の安さだけで順位が決まるわけではありません。だからこそ、提案に手を付ける前に「評価の配点をどう読むか」で差がつきます。この記事では、私が遠回りの末に身に染みた、書く前の段取りを整理します。
総合評価落札方式とは何か
総合評価落札方式は、入札価格だけでなく、価格その他の条件も含めて、発注者にとって最も有利な申込みをした者を落札者とする方式です。これは特定の省庁や自治体だけの制度ではありません。国の契約では、会計法が、その性質又は目的から最低価格による決め方によりがたい契約について、価格及びその他の条件が国にとって最も有利なものをもって申込みをした者を契約の相手方とすることができると定めています(会計法第29条の6第2項)。その具体的な扱いは、予算決算及び会計令第91条第2項で、各省各庁の長が財務大臣に協議して定めるところにより落札者を決められるとされています。
地方公共団体の場合は、地方自治法施行令が、価格その他の条件が最も有利なものをもって申込みをした者を落札者とする一般競争入札を認めています。つまり、国の機関でも地方公共団体でも行われうる決め方だということです。

書き始める前に「落札者決定基準」を読む
私が最初に取り違えていたのは、提案の中身から考え始めてしまったことです。順番が逆でした。
地方公共団体の総合評価一般競争入札では、価格その他の条件が最も有利なものを決定するための基準(落札者決定基準)を、あらかじめ定めなければならないとされています(地方自治法施行令第167条の10の2第3項)。そして、この落札者決定基準は、入札の公告をするときに併せて公告しなければならないとされています(同条第6項)。
ここが肝心です。評価の物差しは、入札公告の段階ですでに示されています。提案を書き始める前に、まずこの落札者決定基準を手に入れ、どの評価項目にどれだけの配点が置かれているかを確かめる。それから、配点の大きい項目に力を集める。私はこの順番を守るようになってから、力の入れどころを外しにくくなったと感じています。
どの項目を重く見るか、数字が教えてくれる
私の経験では、公告される落札者決定基準には、評価項目ごとの配点が数字で添えられていることが多いものです。私がまず見るのは、価格に対する評価と、技術や実績に対する評価の、配点の比重です。価格で大きく差がつきにくい案件なら、技術側の配点が順位を分けます。逆に技術側の配点が小さければ、そこにいくら筆を割いても順位はさほど動きません。
そのうえで、技術側の中でも配点の大きい評価項目から順に、書く分量と具体性を割り当てていきます。配点が二倍違う項目に同じ分量を書くのは、力の配り方として釣り合いません。私は、提案を書き出す前に、配点表を一枚の紙に書き写し、点の大きい順に並べ替えることにしています。この一手間で、どこに時間を使うべきかが目に見えるようになります。
基準には第三者の目が入っている
落札者決定基準は、発注者が思いつきで作るものではありません。地方公共団体では、落札者決定基準を定めようとするときに、学識経験を有する者の意見を聴かなければならないとされています(地方自治法施行令第167条の10の2第4項)。
だから、公告された基準を丁寧に読めば、発注者がその工事で何を重く見ているのかという観点が、そこに表れています。基準の文言をなぞり、配点の大小を自社の提案の組み立てに反映させる。これは特別な技術ではなく、公開されている物差しを先に読むという、当たり前の段取りです。
書く前に、物差しを読む
総合評価落札方式で後れを取るときの多くは、提案の質そのものより、配点の読み違えだと私は見ています。公告に添えられた落札者決定基準を先に読み、配点の重い項目に力を集める。これだけで、同じ労力でも順位は変わってきます。早めに基準を取り寄せ、社内で配点表を共有してから書き始めることをおすすめします。
――この記事を書いたのは、公共入札を支援する株式会社Kuwanaの代表、桑名敏次です。総合評価で惜しくも届かなかった現場に、いくつも立ち会ってきました。
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